2020東京オリンピック・パラリンピック予算の不思議Part1


2016年12月3日


Part1 どんぶり勘定?それとも風呂桶勘定かな?

 平成28年4月25日東京オリンピック・パラリンピックのエンブレムの最終候補作品が、3年近くの歳月をかけ、気が遠くなるようなプロセスを経てやっと決まりました。

 洛中洛外落書大学(略称、落大)の学長たる私めの貧弱な脳味噌でもってしては、その良さが皆目分からない御作品でございます。
 オリンピック・パラリンピックのキーワードは若さ、美しさ、躍動、力強さ……でしょう。

 しかるにでございます。デザイン能力5段階評価で下から2番目のDランクにある私めの目にはどう眺めてみましても、今回のエンブレムはオリンピック・パラリンピックを象徴するキーワード若さ、美しさ、躍動、力強さ……とは程遠く、唯一、上品さのみを感じてしまうのでございます。

 洛都の極上の焼物に印されている紋様(もんよう)、つまり工芸品を一層際立たせる模様(もよう)そんな印象を真っ先に受けてしまいます。

 さあて、さあて、この作品を作り出すために如何ばかりの御予算が使われたのでしょうか?
 不肖(ふしょう)落書大学におきましては、本年度末に

「平成28年度洛中洛外落書大学会計報告書」

を洛都御役所に提出致します。全ての出費事項に領収書をつけまして一文の狂いもないよう、努力を重ねているのでございます。
 洛中洛外落書大学が洛都に所在し活動している以上は、理の当然のことと存じております。

 2020東京オリンピック・パラリンピックのためのエンブレム作成に関わる会計報告の詳細は既に公開されていることと想像し、またそうすべきと確信致します。

 ……しかるに当落大の若手スタッフ数名が得意のネット技術を駆使しまして調査したのでしたが、平成28年10月30日現在、不明の状況でございます。

○唯一、旧エンブレム選考に要した費用は約1億円という報告をネットで見出すことができました。(http://www.yomiuri.co.jp/feature/TO000299/20160119-OYT1T50120.html を参考)

 今回のエンブレム作成に関わった委員の先生はじめ関係各位には私めの脳味噌にも十分に理解できますよう出張旅費、手当等を詳細にお示し下さいましての公開をお願い申し上げます。

 先日、江戸町より洛都に飛脚参りまして、新しい江戸町奉行様がご着任なさったのとのお話を伺いました。

 新しい江戸町奉行様には2020東京オリンピック・パラリンピックの予算を“見える化”することに一大決心でもって努力をなさっていらっしゃるとのことでございます。私め、深く敬服致します。

 江戸町民皆様方の大きなお力をバックに奮闘なさいまして、見事“みえる化”が成功いたしますよう心の底より願いお祈り申し上げたく存じます。

 ……とこんなことをつれづれなるままに願い、物思いにふけっていましたところ、名にしおうIOC(国際オリンピック委員会)会長のバッハ様が江戸町をご訪問中との話を小耳にはさんだ次第でした。
 勿論、早速テレビニュース番組を注意深くウォッチ開始でございます。

 その結果、なんと!2020東京オリンピック・パラリンピックのための競技場諸施設に関わる予算の見積もりが大幅に越えており、このため競技場の変更の可否等に関わる問題でお悩みになったバッハ会長様が、恐れ多くも江戸町を訪問なさっていらっしゃるのではございませんか!

 洛都の皆さんは

“たいそなことどすなぁ!今ごろどすかっ!?”

と眉をひそめてつぶやくことでしょう。

 諸外国が成り行きを見守っていることでしょうから、我が日本国のことを考えると、国民の皆様は居ても立ってもいられない心境でいらっしゃるに間違いございません。このような事態、我国にとってとんだ恥さらしでございます。

 因みに2016年10月15日現在問題になっている競技施設の当初予算と最終見積額は以下のようであると報告されてございます。

会場 当初見積もり 最終見積もり
水泳:
オリンピックアクアティクス・センター
321億円 500億円前後
ボート、カヌー・スプリント:
海の森水上競技場
69億円 300億円前後
バレーボール:
有明アリーナ
176億円 370億円前後
新国立競技場 1000億円 3000億円
(水泳、ボート、カヌー・スプリント、バレー: http://mainichi.jp/sportsspecial/articles/20161025/k00/00e/040/197000c,
国立競技場: http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/258308/091300047/参照)

“あぁ、あぁ、あぁ……、これは一体どういう見積もり違いなのでございますか!?”

“どなた様がこのような見積もりをどのような根拠でお立てになったのでございましょう!?”

 私めの口はまさに“開いた口ふさがらず”の状態となりましてございます。
 明日は歯科病院に駆けつけて、開いたままになった口を元通りにふさいでもらわねば、という状況でございます。

 ただただあっけにとられて口をポカンと開けていましたところ、床下から一筋の紫の煙が立ちましてロシアの文豪トルストイの民話にしばしば登場するあの可愛い小悪魔ちゃんが、例の

“ふっ、ふっ、ふっ、ふっ、ふぅー”

といういや味たっぷりの笑い声とともに現れまして、ゆっくり、ゆっくり私めに近づいて参ります。何やら悪い予感が致します。小悪魔ちゃん、私の耳元で立てつづけに発言致します。

“先生!3つの会場だけではないですよ!”

“2020年東京オリンピック・パラリンピックの主競技場(メインスタジアム)の予算は大誤算だったのですよ!ご存じですよね?!”

“ふっ、ふっ、ふっ、ふっ、ふぅー”

と、笑い声をオフィスに響かせながら私の顔をのぞきこみます。そして立て続けに、嫌味たっぷりな発言を致します。

“学長先生!私達のボス、大悪魔様もこの状況を大変に喜んでいらっしゃるのでございます!”

“大悪魔様がおっしゃるには、オリンピック・パラリンピックを東京に持ってくるため、すばらしい主競技場の写真を会場一杯に写し出したのです!
 ……これらが大きな後押しをしてくれて東京開催が決まりましたそうでございます。
 とーころが、何と何と東京開催が決定されました後、会場一杯に写し出され万場をうならせた主競技場がまるで無視されるようにして物事が進んだのでございます!このことが面白いドタバタ劇の始まりだと、大悪魔様は、にこにこにっこりしながら、仰っているのでございます……”

“この主競技場を完成するには飛んでもない巨額の建築費がかかるということが会議の後に判明し、双六ゲームにおける”フリ出しに戻れ“というサイコロの目が出たわけでした!
 そうでしたよね、学長先生!”

“招致都市決定の最後の機会に見せたオリジナルの設計では、建物全体が大屋根でおおわれたドーム状の形でした。
 このことによって8月の東京の猛暑にもクーラーをフル回転させることで選手達はあたかも初夏の気候を心地よく感じる気分でプレーができるはずでした……”

“とーころがでございます。諸外国に見せて会場全体を大いに感動させた美しいドーム状の主競技場は、雲が散り果て霞が消えうせるように姿を消して、かわりに、あぁ何と! 雨、風当たり放題、真夏のお日様カンカン照りという青天井の主競技場に、姿を変えてしまったのです……”

“8月に頻繁に襲ってくる台風、風雨による競技中止が会期中に決して起こらないように、お天気の程は八大龍王様に

“雨止め給え”、“風止め給え”

と祈願しつつ乗り切らねばならなくなったのでございます!”

 江戸町ご滞在中のバッハ会長様も半分諦めの表情ではございましたが、一言(ひとこと)

”“日本は、(オリンピック・パラリンピックを誘致するために実現の保証のない計画、青写真のもとに、息を飲む程に美しい主競技場などを大型スクリーンに見せるなどの努力をしたのであるから)ある程度最初の約束は守って欲しい。ルールはしっかり守って欲しい”

と苦悶(くもん)の表情でおっしゃっていました。"

 洛中洛外洛外大学学長たる私も招致活動中、目を皿のようにしてテレビを視聴していましたので、この主競技場の勇姿は、夢うつつの中でも我が目にしっかり再生されるほど、強く目に焼き付いて残っているのでございます。

“凄い!! さすが日本だ! やってくれる! 何とも頼もしい!”

と、ぐっとこみ上げ、うるっとなる程の感動を押えることは無理でした……。

 しかし、あぁしかし、これはいわば“空手形”であったのでございます。

“あぁ、何ということだ!”

“一体どうしたら良いのだろう……”

 我が事、いや我が事以上に気がかりでございます。我が日本のことですから理の当然でありましょう。

 この私の苦悶の様子に小悪魔ちゃん、十分に満足したようでした。

“私……もう存分に楽しませていただいた……。楽しみ過ぎたくらい……
 学長先生のこんな困惑した姿たっぷり見せていただいたからね……”

と私の耳元でつぶやいた後、例の

“ふっ、ふっ、ふっ、ふっ、ふぅー”

という笑い声を残して床の下に消えていきました。

 私め、ふぅーと大きく溜息をついた後、考え込みます。やがて一つの結論が出て参ります。以下が今回のごたごたの責任の所在でございます。

“この問題は技術倫理の思想を身につけていない建築デザイナー、技術者、土木建築系教育者研究者に、その全ての責任がある”



と判断させていただきます!

 この理由、私の出版物[1][2]あるいは洛中洛外落書HPに公開してございます記事等をお読みいただければ、十分に理解して下さいますことでしょう。

 今回のこと、何が工学系教育者研究者、技術者に欠けているのでしょうか?
 率直に申し上げますがそれは技術倫理思想の欠落でございましょう。

 技術(テクノロジイ)の本質を深く知り“倫理”の本質をしっかり身につけることこそが第一に必要ですが、誠に申し訳ございません。まったぁーく、欠けております。

 まず最初に言わせていただかねばならないことは、技術倫理の基本の基本たる”歴史”を、まったぁーくご存じない、勉強されていない、歴史の教えているところをあたかも身体の一部のように生き生きと身につけていないということでございます。
 今回の見積もりの余りにもひどい有様、このことを少しは反省していただくために歴史がしっかり教えてくれている教訓を以下に問題という形で示しましょう。

 デザイナーの大先生方に私めから質問させていただきとうございます。

問題です!!

 私め以下のような訴訟を先生方に対しおこします。今回のどんぶり勘定いや風呂桶勘定であった見積書をお作りなさいました先生方には各会場ごとに以下に示す金額を”幕府勘定奉行”に賠償金としてお納め下さいませ。
会場 当初見積もり 最終見積もり 計算式 御賠償額
水泳:オリンピックアクアティクス・センター 321億円 500億円前後 500-(321*5/4) 98.75億円
ボート、カヌー・スプリント:海の森水上競技場 69億円 300億円前後 300-(69*5/4) 213.75億円
バレーボール:有明アリーナ 176億円 370億円前後 370-(176*5/4) 150億円
新国立競技場 1000億円 3000億円 3000-(1000*5/4) 1750億円
(水泳、ボート、カヌー・スプリント、バレー: http://mainichi.jp/sportsspecial/articles/20161025/k00/00e/040/197000c,
国立競技場: http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/258308/091300047/ 参照)

問題:私が算出した賠償金額はどこの国のどの方が書かれた書物のどの章の記述を根拠にしていますでしょうか
(ヒント:技術倫理に関わる知識が少しでもあれば承知されているべき書物にございます。本ヒントにより20分以内に十分回答可能でございます)


お願い:回答は下記メールにお寄せ下さい
kasahara@ogu.ac.jp

読者の皆さまへのお願い

 2020年東京オリンピック・パラリンピック開催前の貴重な時間に、このゴタゴタ騒ぎ!関係者の方々には強烈に反省し、態勢の立て直しをお願いしたく存じます。
 この私の提出した問題が関係者の方々の目に届くように、周りの方々に本紙の一読をおすすめ下さいませ。

 皆さまの声が水面に輪のようになって広がっていき、やがて関係者の方々の目に入ることを心より願っております。


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